松山市三番町に店を構える「串酒場キヨシ」。炭焼きの活気あふれるこの店から届いたのは、ショップカードやコースター、名刺の制作依頼でした。当時はまだ統一されたロゴがなく、ユニフォームの背中に自作のグラフィックが配されているという、断片的な視覚情報のみが存在している状態。その「なんとなくあるもの」を、店の勢いに見合う強固なアイデンティティへと再定義することが求められました。ユニフォームに使われていた江戸文字のモチーフをベースに、バランスを徹底的に再構築しました。自作ゆえの曖昧さを排除し、炭焼きの潔さと酒場の小気味よさを象徴する、シンプルで力強い「マーク」へと昇華。それを起点に、コースターや名刺などのツールへと展開しました。単なる事務的なツールではなく、手に取った瞬間に「キヨシ」という店の輪郭が、お客様の記憶に鮮明に残るような視覚体験を整えています。完成したのは、酒場の喧騒の中でも埋もれない、ストイックなグラフィック群です。現場にあった素材を丁寧に拾い上げ、一貫性のある「旗印」として整えたことで、店としての佇まいがより強固なものとなりました。既存の要素を否定するのではなく、その中にある本質を掬い取り、今の時代に馴染む「粋」な姿へと着地させたプロジェクトです。